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『日本人が築いてきたもの、壊してきたもの』

『日本人が築いてきたもの、壊してきたもの』_c0042548_1484013.gifリリー・フランキーの『東京タワー』のおかんの最期を涙をボロボロ落として読みながら、そういえば東京タワーが壊されるという噂をずいぶん以前に聞いたが、その後どうなっているのだろうかと思い、本棚から引っ張り出したのがこの本である。東京タワーが、終戦でアメリカが日本にゴミとして置いていったM4、M47といった戦車の屑鉄でできていることを教えてくれたのはこの本であった。日本の高度成長を蔭で支えた解体屋を克明に取材した異色の本である。新潟地震で壊れた昭和石油の原油タンク、子どもの頃、何度か見た記憶のある南千住のお化け煙突、ライトの帝国ホテル……、建設術の教科書はあっても解体術には教科書がない。誰も壊す時のことなど考えて造った人はいなかった。だから解体屋は全知全能を傾けてケースごとに解体方法を考え、実行してきたことをこの本を読むと思い知らされる。そして、今、日本には原子炉、超高層、土砂の貯まったダム施設……、いつかそれほど遠くない将来に必ず壊さなければならない巨大な難物が満載している。はたして、この先、解体は可能なのだろうかと読みながら思う。
●生方幸夫(うぶかたゆきお)著『日本人が築いてきたもの、壊してきたもの』(新潮OH!文庫)
●主な目次
1章 米軍戦車と東京タワー
2章 教科書のない仕事「解体」
3章 新潟地震と原油タンク
4章 東京スクラップ・アンド・ビルド
5章 高度成長の裏方
6章 自動車工場のリストラクチャリング
7章 変わり行く都市の顔
8章 先端技術の解体
9章 解体の後のゴミ戦争
10章 解体の今後
補章 解体の現在
Commented by burikineko at 2006-02-13 11:23 x
昨年愛宕山に住む物書きさんが超高層問題に取り組もうとしていた
私に意見を聞きに来ました
彼が疑問に思っていたことすべて今の技術で可能だったのです
いわゆる「解体」なんですね
「解体」って「先端技術」なんですね
近い将来には地球まで「解体」されそうで怖い(されつつありますが)
そういうわけで「農本主義」ってどうでしょうか?(バキッ!)
Commented by maji at 2006-02-15 12:45 x
この本、気になったのでアマゾンの古本、250円で手に入れました。着荷したので、これから読んでみます。
Commented by komachi at 2006-02-15 19:43 x
burikinekoさん、農本主義なんて言われると、コメントしようがないけど、僕はこの本、例えば、溶接屋がどうやって戦車の分厚い鋼板や砲塔を分解しようとしたかといったアナログ的な部分が面白かったのです。プロジェクトXでは光の当たらないもう一方の技術の世界です。しかし、技術が超大になって寡占化すると、経験主義では歯が立たなくなる。この本を読むとそのことがよくわかる。ではこれからの解体難物を誰が壊すのか。先端技術をもった人間にしか壊せない。しかし、先端技術をもつ人間は壊わすという事態がいずれ訪れることに想像力が働かない。そのことに愕然とするのです。僕には地球が解体するというより解体できないもので埋まってしまうイメージが強いです。
majiさん、読んだら感想聞かせてください。majiさんの研究分野ですものね。
by komachi-memo2 | 2006-02-11 14:16 | BOOKS | Comments(3)