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宮本常一講演選集第3巻「都会文化と農村文化」

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 宮本常一講演選集第3巻を予定通り1月末に発刊することができた。第3巻のタイトルは「都会文化と農村文化」である。日本の都会はヨーロッパのそれとはまったく違った成立の仕方をしている。それは江戸時代末の日本の人口3千万のほとんどが農村にいたのに、それから200年足らずの現在、1億2500万にふくれあがった多くの人が都会に集中していることが如実に示している。この事実を抜きにして日本の都市を語ることはできない。本巻に収めた「都会文化と農村文化」「ふるさとの心」「地域づくりと文化」「日本における地方の意味」は、宮本が日本における都市と農村、地域というものをどのように見ていたかがよくわかる講演である。
 また第3巻には1956年の「新生活運動の前進のために」、62年の「社会生活の変貌と新生活運動」、2本の新生活運動に関わる講演を収めた。宮本は新生活運動との関わりで多くの講演をしたが、活字化されたものはこの2本だけである。この巻のために田村善次郎先生が丹念に宮本の遺した講演メモや日記を調べ、巻末に「新生活運動と宮本先生」を書いてくれた。合理的でどこか上から目線の新生活運動と宮本常一の行動とまなざしとは異質なもののように感じていたが、これを読むと、昭和32年頃にいったんそれまでの新生活運動から距離を置き、昭和36年になって書いた「離島・僻地 新生活運動の根本問題」によって、その後の新生活運動のあり方に大きな影響力を及ぼしていくさまが読み取れるのである。
 昭和49年に創立50周年を記念して福知山淑徳高校生のために語りかけた「明日を信じて生きる」は、わたしが好きな講演である。宮本は「いったいしあわせとはなんだろう」と高校生に問いかける。そして、「わたしはしあわせというのは、人が人を信頼し得ること、それができることだと思うんです」と自分の体験を通して語る。そしてそのためには信じられる明日をつくることだと語る。いま、日本がまったく真逆の方向に舵をきりはじめているとき、この講演は60代のわたしが読んでも胸を熱くし、勇気をもらえる名講演である。若い人にぜひ読んでもらいたいと思う。
 さて、現在編集中の第4巻は「郷土を見るまなざし——離島を中心に」である。第3巻もそうであったが、校閲をしていると、どうしても註が増えて、総頁数が予定を超えてしまう。発刊元の農文協に怒られない程度にしないといけない。3月末の発刊。
Commented by 河原佳明 at 2014-02-04 14:23 x
凄いお仕事ですね。
宮上先生の著作集も、なにとぞ、なにとぞ!
Commented by komachi at 2014-02-04 21:29 x
河原さん、どうも。先日は可喜庵であまり話もできずに失礼しました。
by komachi-memo2 | 2014-02-02 14:21 | ヒルトップの日々 | Comments(2)