最近、表題の本を編集しました。腰巻きには次にように書きました。
「小玉正巳。日本レスリング界の草分けの一人が秋田の地にいた。その小玉正巳が語ったトピックスは昭和初期、早稲田大学に集まった誕生したばかりの格闘技エリート集団の青春そのものであった。小玉正巳の波瀾万丈の活躍を経糸に日本の戦前から戦後の時代の変転を緯糸にして秋田の風土に芽吹いたレスリングが多数のオリンピック選手を生みだし世界のレスリングに成長するまでを描く。」
小玉正巳と聞いて、「この人誰?」という人がほとんどでしょう。でも小玉祐一郎先生のご尊父と聞けば、komachi memo2を見る人のなかには「へえーそうなんだ」と思う人がかなりいると思います。そう、小玉先生のご尊父は、日本のレスリングの立役者の一人なんです。わたしもこの本の編集をするまでまったく知りませんでした。ずいぶん昔に、清家清先生が「小玉君は泥棒を取り押さえたことがあるんだ。レスリングをやっていたからね」と、愛弟子のことをうれしそうに語られていたのを思い出し、ああ、なるほどなあと思いました。原稿を前に、小玉先生から御尊父の命日に間に合えばと相談を受けたのは今年の初め。こうした私家版にちかい本の編集の難しさは、著者の思い入れが必ずしも本の読みやすさや面白さにつながるとは言えないことです。お手上げ状態になっていた原稿の編集に大鉈をふるって、ようやく小玉正巳伝が完成しました。オリンピック出場選手の体験談など、およそスポーツに関心のない私には初めて知る世界で、面白く仕事ができました。
●長尾景義著 『秋田のレスリングに賭けた夢──小玉正巳と秋田のレスラーたち』
秋田共同印刷発行 定価:1500円+税 ISBN9784907159153