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『宮本常一講演選集』第6巻「日本文化の形成 講義1」完成

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 『宮本常一講演選集』第6巻「日本文化の形成 講義1」が完成しました。
宮本常一の最晩年、ガンに冒された体をおして続けられた伝説の講義です。
 古代アジアの稲作は日本列島にどのようにもたらされ広がっていったのか。焼畑と狩猟はどのような関係があるのか。竪穴の暮らしはいつまで続いたのか……。日本観光文化研究所に立錐の余地もなく集まった若者たちの人いきれのなかで、自分の終生のテーマであった「日本文化の形成史」を圧倒的な知的好奇心とこれまでのフィールドワークからの洞察力で語った宮本常一。その講義は今も力強く本質的です。第6巻はその講義の前半を収録しました。総376頁。50頁近い巻末註を付けました。そろそろ書店に並びます。読んでください。よろしく。

宮本常一講演選集6 日本文化の形成 講義1 目次

Ⅰ 一九七九年七月六日 
縄文の後裔
渡来人と稲作 
征服王朝と祭祀王朝 

Ⅱ 一九七九年九月七日 
竪穴のくらしと土蜘蛛 
稲作と鉄 
短粒米と長粒米・稲作の広がり 
倭の風俗 
倭と大和朝廷 

Ⅲ 一九七九年一〇月五日 
大陸と列島弧 
古代アジアの農耕 
騎馬民族の渡来 

Ⅳ 一九七九年一一月二日 
焼畑と狩猟 
農耕と秦氏の役割 

Ⅴ 一九七九年一二月七日
農耕文化と機織技術の伝来 
畑作の諸相 
 
付 海洋文化と福岡 

●発行 農文協 定価2800円+税 ISBN978-4-540-13146-2
by komachi-memo2 | 2014-07-25 11:39 | BOOKS | Comments(0)

『エコリノ読本』の中身

昨日、お知らせした『エコリノ読本』の中身を少し紹介します。
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事例に登場してもらった知る人ぞ知る「林・富田邸」。
取材はいつものコンビ、ライター/長町美和子さん、写真/北田英治さん。
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チームネットの甲斐徹郎さん執筆の「暑さ・寒さを見直して快適な住まいに」
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高橋達(東海大)先生担当の「エコリノで考えたい設備」
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マスタープランの古谷和也さん担当の「住まいの遣い勝手を改良する」
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シティ環境設計の高橋昌巳さん担当の「家を丈夫にして長持ちさせる」
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古川泰司さん担当の「DIYで仕上げに挑戦する」
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OMソーラーによる改修実例。改修後の熱収支を分析しています。
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扉裏に入れた吉阪隆正の美しいエコリノのためにあるような言葉。ADの春井裕さんのアイデア。

版型は少し大きめなAB版、170頁、オールカラー。価格2200円+税。
図版豊富、どこからでも読める、新築でも役立つ内容。エコリノで利用したい最新の補助金制度についても冒頭で解説。よろしく。
by komachi-memo2 | 2014-07-18 10:05 | BOOKS | Comments(0)

『まことの徒然草』

c0042548_18445969.jpg 先日、一冊の小冊子が送られてきた。『まことの徒然草』。一気に読んだ、ああ、面白かった。「雑草元年」「庭農業」「ハムレークン」「入り隅物語」「OM10話」……。まるで、まことさんの隣にいて、話を聞いている具合だ。
でもこんなに文章の面白い人だとは。まことさんを知らない人が読んでも、「え! この人何なの?」と興味を持つこと、間違いなしだ。
 じつは私、建築家・奥村まことに原稿を頼んだことがない。というより原稿を書いてくれたことがないのだ。
 ずーと昔、私が20代で建築の雑誌社に入りたての頃、最初に担当した特集が「原点としての卒業設計」という特集だった。だれか女性建築家に書いてもらおうと、初めて中村橋のアトリエを訪ねた。書いてくれないかもしれないよとアドバイスをもらっていたので、テープレコーダーを持っていった。案の定、「私は書かない、林雅子に書いてもらえ」と言われた。テープを回すと、口を閉ざしてしまう。これがまことさんとの初めての出会いだった。それ以来、一度も書いてもらったことがない。昭雄さんの本は4冊つくったのに。
 この冊子の最後で、まことさんは、年をとるにしたがって「自分のやりたいことをやる範囲」と「やりたいことをやれない範囲」の比率が変わってきた、と書いている。文章をすすんで書くようになったことも、この冊子がとても自由なのも、そうしたまことさんの近年の気分の現れなのだろう。いいことだ。もっともっと書いてほしい。
 この冊子、自由で楽しいだけではない。ときにギックと驚かされるのは、まことさんたる所以。
例えば「入隅物語」の空間認識の問題、羽仁もと子から植え付けられたDNA、そして極めつけは次のことば。
「新しい景色 ビックバンなんてなかった。宇宙はものすごい勢いで拡大しているなんてウソ。人間に必要な労働量は今の1/5くらい。雑草こそ文化の中心。誰もやったことがないことをやりたい、というのが人間の究極の希望。人間は何のために生きているかというと、「生まれてしまったから」」。
 80過ぎの婆さんから元気をもらっている。そんな冊子を完成させてくれた東由美子さんと石原朋子さんに感謝します。
by komachi-memo2 | 2013-10-05 18:48 | BOOKS | Comments(0)

若者よ、マルクスを読もう

c0042548_184449.jpg先日、逗子図書館の児童書のコーナーを何気なく物色していると、表題のタイトルが目に飛び込んできた。著者は内田樹と同じ大学に勤める石田康宏。まえがきに目を通すと、石田氏が内田氏に企画を持ちかけ、書簡集の形式で高校生向けに「マルクスはすごいぞ、おもしろいぞ、だから読んでね」と書かれた案内書だとある。
 本に取りあげているのはマルクスの5つの著作。『共産党宣言』『ユダヤ人問題によせて』『ヘーゲル法哲学批判序説』『経済学・哲学草稿』、そして『ドイツ・イデオロギー』。どれもマルクス20代の著作。サブタイトルに「20歳代の模索と情熱」とある。
 内田樹と同世代の私、「そうだよな、高校時代に読んだよなあ」と昔を思うが、何も脳ミソに残っていないのが内田樹と違って悲しいところ。「若者よ・・・・」のタイトル、カウンターに持って行くのが、少し恥しかったが、おじさんも借り出した次第。
 面白いのは断然、内田樹の書簡だ。『共産党宣言』では人を高揚させるマルクスの文書の持つ「麻薬性」を分析、『ヘーゲル法哲学批判序説』ではマルクスのプロレタリア論に断じて留保をつけ、『経済学・哲学草稿』ではマルクスの疎外論の高い倫理性を熱く語り、次に「類的存在」というキーワードに触れてコミューン主義について、リンカーンが南北戦争後にイメージした「理想社会」とそれほど隔たったものではなかったのではないかと述べ、『ドイツ・イデオロギー』ではマルクス的箴言の宝庫を渉猟している。
 図書館の本はアンダーラインが引けないのがつらい。結局、購入。それにしても、この本、ヤングアダルト向きかい?
 あとがきを読むと『資本論』を初めとするマルクスのその後の著作についても、続編を出すつもりが石田康宏にはあるようだが、気の毒だが内田樹が一人でマルクス本を書いたほうが面白い本になるのは明白。内田樹著『おじさんのためのマルクス再入門』、どこかの出版社出さないかな。

●「若者よ、マルクスを読もう 20歳代の模索と情熱」
石田康宏・内田樹 かもがわ出版 1500円

by komachi-memo2 | 2012-01-24 18:59 | BOOKS | Comments(0)

CO2温暖化人為説の虚妄をあばく必読書

c0042548_2251515.jpg 最近、中公新書から出版された深井有著『気候変動とエネルギー問題』は3.11後の必読の書だ。CO2による地球温暖化人為説が、ノーベル賞までいただいてしまった国連のIPCCによって演出された真っ赤な大嘘であることが、驚くべき科学的新事実と共に語られている。このことがマスメディアにおいてまったく報道されない日本国内では、CO2による温暖化は今も金科玉条のごとく信じられているが、すでに欧米では日を追うごとくIPCCの信頼は落ちており、CO2温暖化説はいまや風前の灯火なのだという。
 なぜ、IPCCのCO2温暖化人為説の化けの皮が剥がれたのか? 
 ひとつはIPCCの報告書のデータがCO2温暖化人為説を演出するために故意につくられていたことを示す隠しようもない証拠がリークされたことだ。世に言うクライメートゲート事件である。
 2009年11月17日、IPCCの科学部門を統括するCRUのコンピュータに何者かが侵入、13年間にわたる交信記録とデータが流出してしまった。このメール交信からわれわれがよく目にしてきた1800年辺りから放物線様に急激に上昇する地球の平均気温の変化を表すグラフ(その形から「ホッケースティック」という)や気温とCO2の因果関係を示すコンピュータ・シミュレーションが、都合よくパラメーターを操作しただけのまったくの捏造データであることが明らかになったのである。
 この本では序章で詳細に流出メールのやりとりが分析されており、いかにCRUが温暖化人為説をつくりあげるために腐心し、人為説批判派の圧殺を工作し、ついには捏造に次ぐ捏造に追い詰められていったかがよくわかる。
 もうひとつは、ここ十年ほどの気候学の驚くべき進歩である。本書では第1章の「気候変動はどうして起こるのか」で、このことに多くの頁を割いているが、そこに書かれている研究成果は刮目すべき内容で本書で一番興奮した部分だ。
 地表の温度は上空の雲量に左右されるが、その雲が生成されるメカニズムが最近になって解明されてきたという。雲粒子の生成にはその核となる物質——上空に浮遊する微粒子エアロゾルと、それがイオン化して結合していくために宇宙線が必要であることがわかってきたという。また気候変動と太陽活動の間に強い相関があることは古くから知られてきた。たとえば黒点の極少期に冷害が起こっている。こうした相関が太陽磁場が地表に到達する宇宙線を左右し、太陽磁場が弱まると宇宙線が増え、これが低層雲をつくることで気温を下げるというメカニズムが解明されつつあるという。
 われわれの太陽系が属する天の川銀河系、そのかなたから飛んでくる宇宙線がわれわれの現前の雲の量を決めているというのは、何とも興奮すべき事実ではないか。本書ではこうしたメカニズムを証明する豊富なグラフを示してくれている。
 たとえば同位体元素から求められた過去5.5億年間の熱帯海面温度と宇宙線強度の経時変化、過去5億年における天の川銀河系の超新星爆発と地球の氷河期の対応など、グラフは驚くほどの相関を示している。最近の気候学が明らかにしてくれる事実は目もくらむばかりだ。
 それにしてもIPCCはかくも盛大な大嘘をなぜ捏造したのだろうか。深井は二つの原因を挙げている。
 ひとつは地球上にただ同然に存在する二酸化炭素によって排出権商取引により莫大な利益を得られると画策した輩がいたこと。今や国連は商売の場に化している。狙い撃ちされたのは日本である。日本は2012年までにCO2を6%削減することになっているが、削減どころか年々増加していることは周知の通りだ。画策の肝は京都議定書のCO2削減目標の基準を1990年にしたことである。この年までに日本は多くの省エネ対策を終えており、もう大幅に削減するところがない。一方EUは1990年時点でエネルギー技術の後れていた東欧を抱えていたので、議定書策定時にはすでに削減目標の8%をほぼクリアしていた。
 そして、もうひとつは言うまでもなく、原発推進の口実だ。チェルノブイリ事故以来、しばらくとまっていた世界の原発推進の追い風になってきたことは事実だ。
 だれでも「不都合な真実」を前にすると口をとざす(ゴアにとっても不都合)。事の影響が大きければ大きいほど口をとざし、見えないことにする。CO2温暖化人為説の旗を振り、「低炭素社会」という怪しげな標語を掲げて、これまで日本の社会は政治も経済も研究機関も動いてきた。今やその権益は莫大なものである。しかし、事の本質を知り、いかに誤りを早く正せるかが、国や人の優劣を決める。すでにオーストリア、フランス、アメリカ、カナダではクライメートゲート事件後、温暖化防止法案は否決されているという。にもかかわらず日本においてはCOP15では途上国に一兆円の資金供与をすることが合意され、さらに国は毎年一兆円の税金を温暖化対策につぎ込んでいる。マスメディアが口を閉ざし、何も報じないのもこの莫大な浪費を政府も経済界も教育界も国民に知られたくないからだろう。しかし、CO2温暖化人為説の払拭は震災以後の国の方向を決めるメルクマールである。こうした資金は東北の震災復興に一刻も早くつぎ込まれるべきだ。早晩、その莫大なツケは我々国民にふりかかってくる。
 国連の潘基文は広島、長崎、最後に東北の被災地を回って帰る間際に、こうのたまわった。「国それぞれの自由だが、私は脱原発には反対だ。なぜなら原発は地球温暖化防止に役立つからだ」と。テレビを見ていて、思わず私は「このペテン師野郎!!」とどなっていた。
by komachi-memo2 | 2011-08-17 22:38 | BOOKS | Comments(0)

奇跡の海 瀬戸内海・上関の生物多様性

c0042548_17515997.jpg 今日見たニュースで、福島第一原発事故から40日目にして初めて東電の清水は佐藤雄平福島県知事に頭を下げた。知事が原発の再稼働について、かみ殺したような表情で「あり得ない」と強く言った言葉は、清水の「心からのおわび」と対照的で、強く印象に残った。
 そう、「あり得ない」。全国の原発稼働はもうあり得ない。どんなに電気不足になろうが、あり得ない。そこから始めることしか日本のこれからはあり得ないと、強くそう思う。
 ここに、『奇跡の海』という本がある。上関という瀬戸内海西端の周防灘に奇跡的に残された生物多様性の海について書かれた本だ。我が国固有種で全滅が心配されているカンムリウミスズメ、生きている化石カサシャミセン、田ノ浦で世界で一個体だけ発見された新種のナガシマツボ、天然記念物カラスバト、世界最小の鯨スナメリ・・・・、こうした多用な生物が生態系を織りなす奇跡の海について、現状と保全について書かれた本である。
 今から150年前、瀬戸内海を通過した植物学者ロバート・フォーチュンが見た瀬戸内の海はどこも上関のような海だったのだろうと、著者の一人である加藤真は述べている。この瀬戸内の原風景のような周防灘に、中国電力は出力130万キロワットの原発を2基つくることを30年前に計画、県は建設予定地の田ノ浦を埋め立てることを許可する。これに対し、祝島の漁民たちは実力でこれまで阻止してきた。
 この本を読むと、原発の環境に排出される温排水と付着生物防止剤として注入される次亜塩素酸ソーダが、いかに海の生態系に壊滅的ダメージを与えるかがよくわかる。この本の執筆は上関原発に反対する日本生態学会、日本鳥学会、日本ベントス学会が中心となっている。上関という「奇跡の海」について書かれた本が、同時に原子力発電所建設阻止の本でもあるという皮肉、これ以上「クリーンな原発」の本質を雄弁に語るものはないのではないか。

『奇跡の海 瀬戸内海・上関の生物多様性』
日本生態学会上関要望書アフターケア委員会編
南方新社
定価2000円+税

by komachi-memo2 | 2011-04-22 18:04 | BOOKS | Comments(0)

小島一郎写真集成

c0042548_9381687.jpg以前、電車の吊り広告で見た写真展のポスターで、小島一郎という写真家の名前を初めて知りました。2009年に開催された青森県立美術館での写真展だったと思います。視点を低く見上げるように撮った稲を刈る農夫たちの姿は黒々と、その背後に覆い焼きを駆使した階調豊かな空が遠くまで続く写真は古い絵画のようでした。青森まで見に行く根性がないものの、この人の写真がいつまでも気になっていました。
 先日、『小島一郎写真集成』が出版されていることを知り、ジュンク堂新宿店で購入、この写真家の世界に強く惹きつけられる理由を考えています。
 小島が写真家として活躍したのは昭和30年代の10年ほどの短い間です。この間に写真は階調豊かなリアルな写真からモノクロ版画のようにハイコントラストな表現に変わっていきますが、その白の世界からは雪の結晶の粒々や肌にあたる凍える空気——そうした存在感をさらに増して感じ取ることができます。
 この写真集のいちばん後ろに、一度見たら忘れられないとても印象的な写真が掲載されています。広い荒野の真ん中に白い道がまっすぐに続いています。空は黒く、道のかなた、バニシングポイントに人が3人、歩いています。その彼方にかすかな光が見えます。死ぬ2年前に下北で撮った写真だそうです。
●小島一郎写真集成 青森県立美術館監修 インスクリプト 定価3800円+税
by komachi-memo2 | 2011-03-09 09:42 | BOOKS | Comments(0)

鈴木工務店の小冊子「可喜」創刊

c0042548_17551565.jpg小田急線の鶴川にある鈴木工務店の冊子がそろそろでき上がる。年1冊のペースで発刊が予定されているブックレットだ。鈴木工務店には知る人ぞ知る150年続く茅葺き民家「可喜庵」がある。3代に亘って住み続けられてきたこの民家は、4年前にイベントスペースとして使われるようになり、昨年秋に念願の茅の葺き替え工事が行われた。今年1月102歳の天寿を全うされた先代重吉さんの思いから棟は今時珍しい芝棟である。冊子「可喜」創刊1号の特集テーマは、「可喜庵リノベーション」。鈴木さんの茅葺き替えにかけた思いをつづった。可喜庵で催されるイベントも今年から年間テーマを設定し、ブックレット「可喜」との連動が企画されている。
by komachi-memo2 | 2010-03-24 17:58 | BOOKS | Comments(0)

都会型の耕す暮らし・・・・中臣昌広さんの本ようやく完成

c0042548_16853100.gif初夏から編集作業を進めてきた中臣さんの本の見本が今日届いた。A5サイズ、160頁の小さな本。イラストは浅生ハルミンさん。舞台は都内の58㎡の狭小敷地。救いは隣に公園と神社があること。雨水利用、太陽光発電、緑のカーテン、古材や古道具の再利用・・・・、17坪の小さな敷地に中臣さんの住まいの思いがぎっしり詰まった「都会型の耕す暮らし」の紹介である。この家については以前、雑誌『住む。』の特集「もったいないの愉しみ方」(2006年冬号)で、中臣さんが少し紹介している。書店に並ぶのは1週間ほど先になる。手にとってください。そして気に入ったら買ってください。
●中臣昌広『都会でできる雨、太陽、緑を活かす小さな家』農文協、1700円+税
by komachi-memo2 | 2009-11-09 16:11 | BOOKS | Comments(0)

ドストエフスキーの引力——チェーホフ『サハリン島』

c0042548_10561539.gifちかごろサハリン島に関係する本を2冊読んだ。一冊はチェーホフの『サハリン島』、もう一冊は吉村昭『間宮林蔵』である。『サハリン島』はチェーホフが30代の時、1890年代前半にサハリン島を旅した詳細なドキュメントである。チェーホフは各村をまわって聞き取り調査をし、膨大なカードをつくり、この本をまとめた。その当時、ロシアはサハリン島北部で犯罪者とその家族による植民地開拓を企てていた。サハリン島に多くの徒刑、流刑囚が送られたが、作物の育たない過酷な不毛の土地での生活は悲惨を極めた。ロシアのひとにぎりの資本家の利益のために、国策として徒刑囚や流刑者によって開拓され、炭坑が掘られた。チェーホフがこの旅を企てた目的は明らかでないらしいが、当時、シベリアやサハリンへの流刑の問題が、官憲の横暴や流刑・徒刑囚の非人間的状態がロシアの発展を阻害するものとして、ジャーナリズムで大きく取り上げられていた時期であった。ドストエフスキーにとって、ペトラシェフスキー事件に連座してのシベリア流刑体験がその後の大作を生む孵化器であったように、サハリン島の体験がチェーホフの作家としての成長に大きく影響したであろうことは、本書を読むとよくわかる。
 『サハリン島』を読んでいると、この島を探検した先人の一人として間宮林蔵の名前が出てくる。それで読んだのが吉村昭の『間宮林蔵』である。間宮林蔵がサハリンを探検したのは、19世紀初頭で、チェーホフがサハリン島に赴くよりほぼ1世紀前である。間宮林蔵がサハリン島北部から国禁を犯してアムール川下流域まで文字通り決死の探検を試みる契機になった事件が、千島択捉島の、当時箱館奉行の指揮下にあった会所をロシアの軍艦が襲ったことにあったことをこの小説ではじめて知った。アイヌより北方に住んでいたギリヤーク人について、チェーホフも吉村昭も書いているが、まったく反対のことを書いている。チェーホフによると、ギリヤーク人は自分の妻を物のように扱い、簡単に売り飛ばすと書いているが、吉村はギリヤークの家族は女尊男卑で、女が強いと書いているが、どちらが本当なのだろう。
 本読みはそのときの自分の好奇心のままに読むのが至福であるが、大きな本は大きな引力をもち、その本が好奇心の孵化器となって、芋づる式に大きな本を中心に読んでいく。サハリン島の2冊の本を読んだきっかけは、ドストエフスキーの巨本『罪と罰』が亀山郁夫訳によって光文社古典新訳文庫として、ようやくこの夏に完結したからだ。ドストエフスキーには『死の家の記録』があるが、流刑ということをもっと知りたくなったからだ。
 周知のように、ラスコーリニコフがシベリアに徒刑囚として収容されるとき、ソーニャは徒刑地にいっしょについていく。そればかりか友人のラズミーヒンもわずかな金をため、数年後にラスコーリニコフのいるシベリアに移住することを計画する。ソーニャはともかく、ラズミーヒンまでなぜと思っていたが、囚人についていくということが、当時、特別のことでなかったことが、チェーホフの『サハリン島』を読むと、徒刑者とその家族の生活の実態が述べられていて、合点がいった。
 ドストエフスキーの引力につかまったのは、10代後半、30代、そして50代後半と周期的である。以前は筋書きばかりが気になっていたが、登場する人物が気になりだした。たとえば『罪と罰』でいえば、フーリエ主義者のレベジャートニコフだ。当時の空想社会主義やアナーキズムについて、芋づる読みは続くだろう。しばらくは引力に逆らえそうもない。
by komachi-memo2 | 2009-09-08 11:07 | BOOKS | Comments(0)