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亀山郁夫訳の『カラマーゾフの兄弟』

亀山郁夫訳の『カラマーゾフの兄弟』_c0042548_12412669.gif仕事の打ち合わせに往復する2時間の湘南新宿ラインの車中は貴重な読書タイムである。最近、30年ぶりに『カラマーゾフの兄弟』を読んだ。昨年夏に発刊以来、爆発的なベストセラーとなっていると聞いて、何故だろうと思っていたが、納得できた。「いま息をしている言葉で、もういちど古典を」という光文社古典新訳文庫の翻訳の読みやすさは評判どうりだったが、感心したのは毎巻の解説の丁寧さである。「カラマーゾフ」という言葉が「黒く塗る」といったような禍々しい意味を思っていること、この小説が驚くべきことに実はその後に皇帝暗殺という書かれずに終わった第二の小説との2部構成で構想されていたことなど、巻末の解説で初めて知った。よくある文庫の通り一遍の解説ではない。亀山郁夫訳のこの文庫では本来4巻で納まるはずの文庫をあえて5巻本にし、エピローグだけを5巻に収めているが、その5巻には新書一冊に相当するほどの解題とこれまた亀山による『ドストエフスキーの生涯』が載せられている。そして訳者の亀山は「再読を考える読者のみなさんにぜひともお願いしたいのは、プロットの単線的な流れと複線的な流れ、すなわち、どこでだれが同時に何をしているか、という点をつねに念頭に置きながら、読み進めてほしい」と言い、物語の主要登場人物のダイアグラムを親切にも挙げてくれている。これでは再読しないわけにはいかないではないか。古典における訳者の果たす力の大きさを実感する。
Commented by sosakujo at 2008-04-02 13:39
このシリーズは、わたしも愛読しています。
ゴーゴリの『鼻/外套/査察官』/浦 雅春 訳を読んで、ロシア人にとって、ゴーゴリとはこういう存在だったのだと思い、トロツキーの『レーニン』/森田成也 訳を読んで、トロッキストと呼ばれるのがイヤで、それまで読まなかったことが悔やまれ、ホイットマンの詩集を読んで、アメリカの根にあるところの健全性を感じたりしました。ジロドゥの『オンディーヌ』を読もうと思って買ってあります。
『カラマーゾフの兄弟』は、中学生の時に読んで、これは読めないと思って、それ以来、手にしていませんでしたが、読んでみます。
あと、メルヴェルの『白鯨』の新訳が出たらいいなと思っています。

Commented by komachi at 2008-04-03 08:56 x
小池さん、ご無沙汰です。そうですか、新古典翻訳シリーズ、愛読されているんですね。私は学生時代にドストエフスキーばかりを読んでいた時期があって、また嵌ってしまいそうです。ヴィトゲンシュタインはカラマゾフの本文をそらんじられほど何度も読み込んでいたそうです。一生に何度も読む機会がないのだから心して読めと、翻訳者亀山郁夫は解題で述べていますが、こういう翻訳者が自分の人生のうちにいたことは幸せです。
Commented by sosakujo at 2008-04-05 07:48
サンクトペテルブルグに行きたいと思ったことがあります。それは中学校の時に河出版の『罪と罰』を読んだ思い出が深く、この小説に書かれた路地などを歩きたいと思ったからでした。『カラマーゾフの兄弟』は歯が立ちませんでしたが、幾つかのドストエフスキーの小説を読み、それもあって埴谷雄高の評論なども読みました。そのうちチェーホフに傾倒するようになりましたが、いま、文学にもう一度帰っていて、まあぼくの場合は浅読みですが、楽しんでおります。
Commented by komachi at 2008-04-05 17:40 x
ドストエフスキーから埴谷という読書コースはけっこう我々の世代に多いのではないでしょうか。小池さんはマセていて中学時代から読んでいたということは、その当時はまだ「死霊」は手に入りにくい時だったと思いますが、私がドストエフスキーと並行して埴谷を読んでいたのは高2,高3の頃で、河出書房から著作集が出始めた時でした。杉浦康平による黴のはえたような装丁の「死霊」をむさぼるように読んだ記憶があります。それから埴谷と同世代の第一次戦後派の小説や詩へと広がっていきました。その辺も似ているのかもしれませんね。
Commented by sosakujo at 2008-04-07 17:02
ぼくは『死霊』は恐くて近づけませんでした。未来社から出ていた『墓銘と影絵』や、『凝視と密着』や、『罠と拍車』などの評論の読者でした。
Commented by iGa at 2008-05-10 15:03 x
5月13日(火:午前10時05分~10時30分)から2月と3月に放送された『亀山郁夫 悲劇のロシア ドストエフスキーからショスタコーヴィチへ』の再々放送が8回にわたってNHK総合で毎日同時間に放送される予定です。
http://www.nhk.or.jp/shiruraku/200802/monday.html
http://www.nhk.or.jp/shiruraku/200803/monday.html
Commented by komachi at 2008-05-10 19:16 x
iGAさん、どうもです。その番組は見ていませんでした。
by komachi-memo2 | 2008-04-02 12:48 | BOOKS | Comments(7)